大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和37年(オ)14号 判決

上告人

宮川義男

被上告人

村橋進

右訴訟代理人弁護士

山田直記

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について。

所論は、原審が本件につき再審事由があるものとして本案の審理を進めたのは、再審訴訟手続に関する法規の解釈適用を誤つたものであるといい、民訴四二〇条一項七号、二項によると、宣誓をした当事者本人が虚偽の陳述をしたことについては、過料の裁判が確定したことが再審事由存在の要件とされているところ、上告人(前二審控訴人)の本件陳述については過料の裁判がなされていないから、再審事由は存在しない旨を主張する。

しかし、原審の適法に確定したところによると、上告人(再審被告)は被上告人(再審原告)から本件三万円の弁済を受けているにかかわらず、これを受けないとして民事の確定判決(前二審)を受けたことが、裁判所を欺罔して財産上不法の利益をえた詐欺罪に当るものとして、有罪の確定判決を受けたが、前二審の確定判決は、宣誓した上告人が本件三万円の弁済を受けていない旨陳述した供述と他の間接事実とによつて、上告人勝訴の判決をするに至つたものであるというのである。そうだとすると、第二審おいて勝訴判決の証拠となつた上告人本人の供述は、右金三万円の弁済の点に関する限り、虚偽の陳述であるということになり、かかる場合、当該陳述をしたこと自体が処罰されていなくとも、上告人が前記の有罪判決を受け該判決が確定したときは、民訴四二〇条一項七号、二項に該当すると解した原審の判断は、当裁判所も正当としてこれを支持する。所論は、右と異る見地に立つ独自の見解であつて、採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官斎藤朔郎 裁判官入江俊郎 長部謹吾 松田二郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例